ここでもう一つ考えなくてはならない事例が有ります。
それは、このカテゴリーには当てはまらないと言う方です。
自分は両親に絶対愛を勝ち得ているし、家族とも立派に仲良く暮らしているのに、あるときからパニック障害になってしまったという場合です。
その場合に考えられるのは、パニック障害を引き起こした本人は「負の連鎖」を背負っていないが、彼や彼女の配偶者や職場の人間関係の中に、実は「負の連鎖」を背負っているものが存在すると言うことです。
しかも彼や彼女の配偶者もしくは職場の人間は「負の連鎖」を背負っていても、第2のカテゴリーの仲間ではなく、第1のカテゴリーの仲間であることが考えられます。
つまり虐待された人間が第1のカテゴリーに属し、子供や配偶者あるいは他人を虐待していくと言う局面であります。
こちらのほうが実は厄介なのです。
何故ならカウンセリングに訪れる方は患者さんで、パニック障害を引き起こしているのですが、起させた本人は自分が責任を負っていると感じていないからです。
無自覚のまま次々と「負の連鎖」を作っているのです。
例えばパニック障害の患者さんとのカウンセリングで「負の連鎖」を持っていない可能性が高いのですが、発作を度々引き起こす方がありました。
この患者さんの場合、結婚15年後に最初の発作を引き起こしています。
夫に問題があり、DV(ドメスティックバイオレンス)とまではいかないが、言葉が荒く、怒鳴り散らし常に家庭は戦々恐々としている状況だったと言うことです。
夫は確かに「負の連鎖」を背負っている第1のカテゴリーの人間と言うことが良くわかりました。
自分の母親からは条件付の愛情を示され、妻を絶対に母親のようになって欲しくないと望んでいました。
つまり、言葉を替えれば、自分を支配するあるいは子供たちを支配する母親にはしたくないと言うことになります。
一見素晴らしい夫に見えるのですが、反面常に自分が支配されないように虚勢を張り、常に家族を支配していないと心の均衡が取れないのです。
これも「負の連鎖」を背負ったAC(アダルトチルドレン)の1例です。
全て自分への命令を与えるものへの拒否感があるのみです。
仕事上でのストレスは家族、特に妻に対して鬱憤が晴らされると言うことになりがちです。
そこで両親の話をしようとすると、理想的な彼女の両親の姿は、当然彼には受け入れ難いものなのです。
実家には帰るな、自分の両親の話はするな、という反発心を生むだけなのです。
当然夫婦間の感情の軋轢は大きくなり、何度も離婚を考えたそうですが、子供のことを考えるとそれもできない、と思っているうちにパニック障害を引き起こしてしまったと言うことです。
夫婦の間に問題を生じている場合、夫が妻を充分に愛せない原因は前にも述べたように夫が母を愛せていないのが原因です。
夫が母から無条件の愛を与えられていないから、妻が父母を愛し、子供たちを無条件に愛している姿は容易に容認できない姿なのです。
妻の話す世界には信じられない理想的家族の姿がある、これが彼にとっては得たくても得られない「苦」であったのです。
彼の心の「苦」は心の底に沈めてあったはずなのに、妻の話が彼の心の傷を抉るような気がするのです。
その瞬間彼は妻を暴力的に制圧し、不幸に陥れることにより、自分と同じ土俵に上がらせてしまうのです。
そして妻も自分と同じくらい不幸なのだと言う履き違えた平等感に安心するのです。
これは母には出来なかった仕返しを、妻を通して、しているともいえます。
女性には支配されたくないという歪んだオイディプスコンプレックスともいえます。
現実に彼は自分の母親と合えば大喧嘩を始めます。
そのため一緒の職場には同席せず、勿論同居もしていません。
この治療法はどうするかと言うと、次回から治療法を述べていくのですが、本人がカウンセリングにお見えにならないのですから、普通の医療ではNGのはずですが、私どもにとってはこれもチャンスなのです。
パニック障害を引き起こしている患者さんを通して彼を不幸のどん底から引き上げることも可能なのです。
それは治療の第2段階でお話ししていきます。
治療可能と言うよりここで治療しないと、彼の「負の連鎖=アダルトチルドレン」は子供たちに引き継がれてしまいかねないのです。
患者さんには自分のためでもあり、かつ子供たちへの連鎖を止めるためにも大変な役割があるのです。
それは大変難しいことのようですが、実は考えようによっては簡単なのです。
患者さんがそれをキチンと理解し、実践することだけが重要なのです。PR